2月のここ茶コンサートは心にしみるコンサートでした。
今から約80年前、サイパン赴任中のある医師は日本製のヴァイオリンを持っていました。
サイパンではホームコンサートなどで人々に素敵な曲を贈り続けていましたが、太平洋戦争がはじまると世界は音楽どころではなくなり、医師も命からがら日本に帰国、ヴァイオリンも戦火をくぐり抜けて日本に...
歳月を経て今日、そのヴァイオリンで当時弾かれていたであろう曲が、再び皆さんに届けられました。

はじめに、当時の貴重な写真を見ながら「戦火をくぐり抜けたヴァイオリン」の持ち主であった医師の年表の紹介がありました。(医師の娘の牧野直子さん)
そしていよいよコンサートスタート!
まずは「ダイスの瞑想曲」「カンツォネッタ」
演奏は箕面出身のヴァイオリニスト横山亜美さんです。
明るくわかりやすいお話と迫力ある演奏に聴き惚れてしまいます。

今日のコンサートは、ヴァイオリンの修復なしでは実現できませんでした。
修復をされたのは弦楽器製作家でありチェロ奏者でもある富田素行さん。
どこが壊れていたのか、そこをどのように修復されたのか、とても興味深いお話をしてくださいました。
ヴァイオリンの接着剤は膠(にかわ…動物から抽出されたゼラチン物質)ですが、自然由来であるがゆえに、熱で溶けてはがれてしまいます。当時、はがれた部分をおそらく木工用ボンドを使ってつけていたようで、まずはそのボンドを取り除く作業から始められたそう..
ほかにも、自分で修復された跡があり、物が不足していた当時に苦労して修復していたことが想像され「どうしても弾きたいんだ!」という強い思いが感じられる、そんなヴァイオリンだったと話されていました。
その後、ヴァイオリンとチェロで「金婚式」「ゴセックのガヴォット」

ほかにも「夢のあとに」「トロイメライ」などほとんどが聴きなじみのある曲だったので、利用者さんからはハミングも聞こえてきていました。
最後の「蛍の光」のスコットランド版(?)はとても厚みのある音で、いつも聞いている「蛍の光」とは全く違う曲のようでした。
80年の時を経て、いろいろな方が関わって、そして今日その音色を聴くことができて...
奇跡のコンサートでした!